へなちょこフリーター日記

おもしろおかしく生きてきたいね

またひとつ歳をとる

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気がつくと目が影を追っている。

 

桜並木を自転車でぬけながら、青信号を待ちながらーー通勤時間中、馬鹿のひとつ覚えみたいに、あぁ綺麗だと何度もおもう。先月まではそんなのことなかったーー春になり、新芽が芽吹いて主張を濃くした陰影から、四季の移ろいや生命力を感じとっているんだろう。

 

 

仕事でなんてことない注意を受けた。

 

相手の物腰はやわらかで、ちょっとうっかり程度のミス。「またやっちゃったー!これ、けっこうむづかしいんですよねー!」てな感じに失敗を笑いに変える技術と愛嬌がわたしにもあればな……わたしが発した「気をつけます」は、ミスの内容とつり合う軽さをしていただろうか? 必要以上にビクつく自分からみんなが目を逸らしているんじゃないか。不安を倍々にする簡単なお仕事に気をとられていると、頭に声が聞こえてきた。

 

「もう終わった、はい、無能確定」

 

妄想だってことは重々承知している。みんなはいつも通りで、変なのはわたしの方。

 

「こんなことさえできないなんて、この無能無能無能無能……」

 

自分を罵る言葉に頭を占領される。わたしは仕事をしなければならないのだ! 追われると逃げるタイプの平常心はとっくに地平線の彼方で、わたしに邪魔されたわたしは変なうっかりミスを重ね、わたしをいじめるわたしはその度に「ほーらね」とやけに楽しそうに責め手を緩めない。

 

「今回の件でお前のダメさが露呈した。どーせ周りはお前に失望してる。裏では悪口を言っている。バイトさえろくにできないんだから死んでしまえ」

 

……これきっかけで周りから疎まれるなら、わたしはとっくにみんなから嫌われとるわ! それでも、裏はわからんけど表面上はうまくやれとるわ! それで十分じゃ! こんなことで死なないかんなら、とっくに死んどるわ!

 

「死」っていう強力ワードを引き合いに出されて目が覚めた。これ、ネガティブ時のお決まりのパターンやないかと。考えて喋っとるわけやないなと。ミスの程度とかとは全く関係なく、失敗=死の方程式がわたしの脳では成り立っているらしい。

 

幼いころはたぶん漠然と「死」が怖くて、その恐怖心で尻を叩くことで、誰かしらの「都合のいい子」をやれてたんだろう。ここに居てもいいよ、と言われるには、そうするしかないと妄信していた。いまは、尻を叩かれてまで長生きしたいとはおもわない。尻をやわやわと労って早死にするならそれで満足。

 

幼いわたしは随分ストイックに生きていたんだなあ。自分を甘やかす技術のみを磨く今のわたしを、真面目な彼女は嫌うだろう。だけど、彼女を「なんもしなくても生きてていいんだよ」って実体験をともなった説得力をもってしてハグしてやれるのは、世界でわたしひとりなのだーーそんな今のわたしを、わたしはいっとう好いている。