へなちょこフリーター日記

おもしろおかしく生きてきたいね

ふつうに街をあるくため、わたしはきっと強くなる。

 

はらをくくるまえに けんをぬくな。

 

 

 

「次会ったら殴る」と言われたーーあれから4年になる。

 

わたしの切りだした別れ話が拗れにこじれ、おなじ日本語を話しているのに意思の疎通がとれなくなった。

 

正確には「言われた」ではなくて「書かれていた」ーーメールでのやり取りだった。

 

その後、無事にと言うには後味の悪い形で相手との縁は切れ、今現在まで顔を合わせてはいない。

 

 

 

「殴る」と言われた恐怖が立ち消えたのは、実はつい最近だ。

 

相手には住所や学校、バイト先、あらゆる個人情報を知られているわけで、わたしを殴りにどこへ現れてもおかしくなかった。

 

合鍵をわたしていなかったのは幸いだったが、知らぬ間に作られていた可能性だってある。鍵なんてものの数分で複製できる。

 

自分の家の玄関が無人だとわかるまで、毎日毎日怖かった。結局恐怖に耐えられなくて、その月のうちに一人暮らしの家を引き払った。

 

 

 

「あなたの願いをなんでも叶えるから復縁して」だったらわかるじゃないですか?

 

復縁したい相手に「殴る」って言ったら逆効果ってことが彼にはわからない、わたしの理屈が通用しない、そのことが恐怖を増長させていた。

 

彼とは縁もゆかりもない土地へ移ったあとも、似た背格好・服装・髪型の男性を見かけるたび心臓が跳ねたーーこんなところに居るわけないのに。

 

「次会ったら」の「次」はまだ来てない。その言葉に縛られて、心のどっかの怯えはたぶん一生消えないーー。

 

 

 

他人の思考をよくトレースする。

 

その人になりきって、どんな気持ち・思考を経て色々な言動に至ったかを考えてみると、これが意外と、わかるーー正解かはわからんけど。意味不明な他人の言動に説明がつくとすっとする。

 

「殴る」発言の主についても何度かトレースしてみた。何しろ意思疎通不可だったので、恐怖を半減させるため、ひとまず相手の理屈を理解しときたかった。

 

そんでわかったーーあいつにわたしを殴る気はなかった。

 

 

 

……たぶん、としか言いようがないんですけどね。

 

怒りがつのってつのっての「殴る」だとおもっていたが、手をあげる気なんておそらくさらさらなかった。

 

手をあげたら面倒なことになる(警察とか体面とか)と重々承知していて、あのやり取りの直後会ったとしても殴らなかったとおもう。

 

「殴る」発言の真意は「そう言っとけば怯えて従うだろうとふんだ」からーー殴るまでもない。脅すだけで従うやつだと認識されていたと考えると、すごくしっくりきた。

 

怖いこと言っとけば自分の思惑どおりになるんなら「あなたの願いをなんでも叶えるから」なんて面倒な交渉、わざわざするわきゃない。

 

あの頃のわたしは力関係に弱くて「脅せば従う」って読みは大正解だ。ただし「怖いもの」に「殴る」をチョイスしたのはいただけない。

 

そんなものより当時のわたしが一等こわかったのは「あなたとの復縁」だったのだから。

 

 

 

「殴ると言っときゃこいつは従う」って、自分より強いひとに対して考えるだろうか?

 

わたしがレスリングの日本チャンピオンだったとしても、彼はおなじ脅し文句を使っただろうか? 彼とおなじ体格・体力の男性に対して、彼はおなじ文句で相手を従わせようとするだろうか?

 

わたしを傷つける覚悟もないやつに「殴る」という言葉の鎖をつけられたのが、くやしくてくやしくてたまらない。

 

「次」に怯えることなく街を歩きたい。

 

「殴る」っていうただの言葉に屈したくない、もし万が一殴られたとしても他人の思いどおりなぞなってたまるかーーそんなわけで、わたしは強さにあこがれている。