へなちょこフリーター日記

おもしろおかしく生きてきたいね

 

言葉をたぐり、空のつぎ目に耳をすます。こぼれるように息をして、きっと明日もなんでもない。そうでなくっちゃあ、玉子焼きも生焼けだ。奥歯でそっと噛みしめて、弾けた目玉のなかに、とおい海をみた。星をつなぐ指先にともす歌とか、鮫にきかせる昨日のこととか。掘れば掘るほど夜が深くなっていく。爪のなかに夜をみている。ひとつひとつ、あなたのと、わたしのと同じだって、最後までどうしても言ってあげられなかった。嘘でもいいって、信じてあげられずに、潮が満ちていく。海になっていく。

 

 

孤独だから出会えた、そんな風に笑ってみせれば絶望だったけど、光っているから、まあ、大丈夫なんだろう。君の最悪な笑い方も、僕の体でろ過すれば、星にも月にもなった。今日も明日も明後日も、なんでもない光の羅列、流線型の幸せと、不幸せな波紋のなかで、生きたい、というエネルギーさえ手放して、小魚の群れにたかられている。朝陽につらぬかれている。命だって、どうなってよくなるくらい新鮮に砕いてくれればそれだけで、よかった。右腕がなくなってから気づいても、もう遅いけど。だれかの涙だった束に、何千回とかき撫ぜられながら、喉の記憶をたどろうとしている。骨と石の出会う音、空っぽの耳管に溶けて ーー いく。

 

欠陥人間、リコールにノーと言う。

 

いっそのこと、病気、ということにしてしまえば、このやっかいな気質ともうまくやっていけるかもしれない。

 


幼いころの親との関わり方のせいなのかもしれないし、遺伝子とか、脳の回線がこんがらがってるとかもありそうだけど、治すにしたって魔法みたいにくるくるぽん、とはいかないわけで ( シンデレラ的な時限爆弾式ならなくはないが ) 、とにもかくにも時間を稼ぐため、治療法不明、未知の病ってことにしてみる。

 


やっかいな気質というのは、例えば他人への関心が薄いところ。未知の五感を体験できるアトラクションとしてしか、どうやらわたしは他人のことを、とらえることができないっぽい。

 


小説やエッセイに描かれる人物になりきることは三度の飯より好きなんだが、好物はなんだ、昨日は何をしてただとかの意見交換には、とんと食指が動かない。触り心地のない言葉はどうにも持て余してしまって、どうしよどうしよと焦っているうちに、人との繋がりがぽろぽろ両手からこぼれていく ーー 。

 


この気質を「頑張ればなんとかできる」と思っていると、これがなかなかどうしてツラいものがある。

 


特効薬の作り方はわからないなか、人と関われば関わるだけ問題は更新されていく ( ブログの更新はむつかしいというのに )  。課題の山に囲まれていると、世界に自分ひとり、みたいな気分になってくる。ーー 要するに、死にたくなる。

 


なまけている。逃げている。楽をしている。…… もう嫌なのだ。そういう鋭い言葉に刺されて、血を流しながら歩いていくのは。わたしはもっとかろやかに穏便に、日々を送りたいのだ。

 


対処療法でいいじゃあないか。難病、ということにして、わずかでも生き延ばす術をカッコ悪く探したってかまわないばずだ。

 


先端恐怖症とかトライフォビアとか、あれは意思でどうこうできるものではないじゃないですか。なんでなのか自分でもわからんけど、怖いもんは怖い。

 


手触りのない言葉で人と関わるのが、どうにもツラい。認識を変えてみたり、対人関係を見直したり、色々試してきたけれど、手放しで楽しいとは思えなかった。人との関わりで得られる喜びを、苦しさが上回ってしまうなんて …… 人間として欠陥品だ。

 


あーあー。

 


認めたくないけれど、たしかに、この感覚は「ある」。どうにもこうにもわたしの一部だと割り切って、一緒に生きていくしかない。そう開き直ってみる。

 


人と関わる、それはつまり生きていく、ということそのものだ。

 


わたしは生きていくうえで、けっこう重いハンデを負っちゃってるらしいぞ。なんか知らんけど、気づいたらそうなってた。ひととしてどーなのー、って責めても、どうもならだった。

 


万年骨折してるようなもんだ。人目につかないところの骨がぽっきりいってる。そんな風に意識して、この「やっかい」とうまくやってく道を見つけたいと思う。

 


そうしてはじめてみえてくる世界も、きっとどこかにあるだろうさ。

 

一日のはじめかた

 

朝にたべる食パンがなくなったので、はやくからやっているスーパーへ買い出しにでた。

 

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ついでに昼のおかずも調達せんと、店内をうろうろ。そこかしこの通路で棚出し作業がおこなわれていて、ダンボールをのせた台車で通路が埋まっている。行き止まりにいきあたっては、角を折れ、あみだくじのように進んでいくのはちょっと楽しい。

 

お客にかまっていられない、というように作業に没頭している背中は、大仰に「いらっしゃいませ」と笑顔を向けられる時よりもなんだか人間じみて見えた。

 

こちらが不用意に近づいて、道を譲ろうと慌てさせてしまったりなんかすると、こちらこそ仕事を邪魔して申し訳ない、と伝えたいのにとっさに言葉がでなくて、結局そそくさと立ち去るだけになる。先を急ぐ車を待たせて、横断歩道をわたっているときの焦りに似ているかもしれない。

 

刺身と惣菜コーナーは空っぽだったが、揚げ物だけはたんまりと準備されていた。どうやら揚げたてらしく、揚げ油のにおいが空間に充満している。きんきんに冷えた店内で、その場だけはちょっとばかりあったかいように感じられて、なんだかこちらがプラスチック容器におさまった揚げ物になったように思えてくる。

 

唐揚げにコロッケ、エビフライにカキフライ。種類はたくさんあるのだけれど、衣は1ミリも焦げたりせずに、どれも同じキツネ色をしている。

 

揚げ物の群れをさまよううち、だんだんと神経衰弱をしているような気分になってきて、どれを食べてもおなじ味がするんじゃないか、と思ったりもするのだが、結局は、その時に最適な揚げ物があるはずだ!  と信じて、あーでもない、こーでもないと、いらんとこで頭をつかう。

 

そして選びとった本日の揚げ物は、アジフライ。1つ30円也。自宅の棚の、随分と長い間居座っている味のりの存在をふいに思い出したのだ。出汁醤油をしませた白米に、味のりとかつぶし、アジフライをのせれば、のり弁当ができる。……これはどう考えたってうまい。

 

はりはりした歯ざわりのものが食べたかったので、ピザポテトやプリッツ、曲がり煎なんかを買い物カゴへがさがさ放りこむと、存外に大荷物になった。重くはなかったが。

 

色気もへったくれも、おまけに栄養もなかったが、茶色いだけの昼ごはんは素朴にうまくて、それだけでもう今日がよい休日であることは、言うまでもなかろー。

 

 

かかとのゴム 鳴らしながら

ひとつひとつ 扉 たたいてく

 


ここしばらく 雨は降っていない

こぶしをはね返すかわいた音は きっとそのせい

手をつないだ女の子が

瞳をくりりと瞬かせ

そっと教えてくれたこと

 


昨日から腹をすかせている

カタカナの浮いた 砂の味のスープ 皿によそって

白いテーブルクロスの皺をならす

地平線が上手にたわんで

つめたい漁火をのみこんでいく

 

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青い皿 お月さまへかかげて

明日も晴れになるように

涙が 悲しかったりしないように

手の中のスプーンがあったまるまで 星を数えた

 

布団は朝まで ぼくの帰りを待っていた

 

 

貝殻をさがしている

 

うずまきの先端で 海を煮だして 

クローゼットにしまっておいたはずなのに

仕方がないから トイレットペーパーの芯

耳にあてた ほら 音がする

 

 

とじていく音が

 


皮膚の堤防をかいくぐり

口から鼻から

治りかけの傷口を舐めて 爪と肉のあいだ

髪の毛をすくいとって

ぼくのからだ ちっぽけな星になっていく

 


ぬめつく足の裏には

黒と紺と いくばくかの透明が積もっている

ぼくの怠惰を許してくれそうにない

 


もう無言ではいられない

だからここへやってきたのに

はがれてく意識の輪郭を おいやっておいやって

とうとう 息をすう

ぼくはどうしようもなく ひとりだった

 


空気にふれて

はりはりと とりもどしていく 皮膚がこわくて

流れてくサンダルの片方は 見ないふりをした

一本足でも 夜には眠る場所がある

それくらいには ぼくはひとりのままだった

 


とおくで ヒグラシが鳴いている

 

おっちょこちょい、ここに極まれり

 

恥をしのんで告白します……自転車、盗まれてませんでしたー!

 

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盗難届を出しに行こうと、自宅の玄関を出たわたしの頭の中で声がした。―― 〇〇スーパーの駐輪場、確認したほうがいいんじゃないかい?

 

近所のスーパーへは歩いて行くこともあれば、自転車に乗って行くこともある。抜けたところのあるわたしは、自転車に乗って行ったことをすっかり忘れて、徒歩で帰ってくるときが、たまーにあった。

 

とはいえ、いつも自宅にたどりつくまでに、はっと気がついて引き返していたので、完全に置き忘れる、ということはこれまで一度もなかった。

 

駐輪場から自転車がなくなっている。そう気づくとまっさきに、自分自身をうたぐってかかった。

 

クレジットカードの利用履歴と日記、あいまいな記憶を照らし合わせた結果はこうだ ーー スーパーへ買い物に行った二日後、自転車に乗ってコンビニへ行き、置き忘れることなく自宅まで帰ってきている。自転車は盗まれたと考えた方がつじつまが合う。

 

そうして盗難届を出すに至ったというのに、頭の片隅では相変わらず声がする。―― 一回見といた方がいいって。あの駐輪場にあるかもよ。なかったらなかったで何も変わらんのだし、ね?

 

うるさいなー! そんなに言うなら、見といてやろーじゃーないか! ま、どうせないけどね。スーパー行ってたら、絶対カード使うし、カード履歴は残ってないし、つまり行ってないってこと。ほーら、駐輪場に黄色の自転車なんて、な………………あった。

 

何の変哲もない駐輪場で立ち尽くす。

 

目の前の見慣れたフォルムの自転車が、他人のものであってくれ。心の底から神に祈った。しかし防犯登録番号を確認するまでもなく、ハンドルに取りつけたスマフォホルダーとライトの組み合わせが、これはお前の所有物であると、如実に語りかけてくる。

 

ただの置き忘れを、「盗まれました」と警察に申告してしまった、どうしようもない阿呆はこのわたしです!

 

とんでもない羞恥に、思わず叫びだしたくなる。周囲を行きかう買い物客が、わたしを指さして笑っているような気がする。

 

警察にどう説明していいやらわからない。

 

だってだよ、いくらなんでも馬鹿すぎるではないか……。一瞬「近所のスーパーで “ 偶然 ” 見つけました」と、虚偽の申告をすることも考えたが、スーパーの防犯カメラをチェックされでもしたら、すぐに事実は判明するだろう。

 

恥に恥をかさねてどうする! ああ!  いますぐここで自害したい …… !

 

事をひきずれば、ただでさえひ弱な精神に支障をきたすことは目に見えていた。スーパーから自宅に戻ってすぐに、警察へ連絡をいれた。冷房のきいた部屋にいるというのに、心臓は脈打ち、そのうち胃のあたりがぎゅるぎゅると痛みはじめた。

 

盗難届の取り下げ手続きのため、自宅まで来てくれた男性警察官は、こちらの落ち度を責めるでもなく、終始丁寧に対応してくれた。きつく叱られても仕方がないと身構えていたぶん、ほっと胸をなでおろしたが、手続きが完了するまで、心が落ち着く暇はもちろんなかった。

 

書類の必要事項の穴を埋めて終わる、簡単な手続きかと思えば、実際はそうではなかった。

 

聴取をうけてから、ずいぶん待たされるなーと思っていたら、出来上がった書類には、A4サイズの用紙一枚を埋めるくらいの分量で、警察官の方の手書きの文字がずらずらと並んでいるじゃあありませんか。

 

わたしが自転車を見つけ、盗難届取り下げに至るまでの経緯を、誰が見てもわかるように、詳細にまとめてあるのだ。

 

今回の件では何度目かしれない、申し訳なさの波に飲みこまれながら、書類を読み上げる声に、はい、はい、と返事をして、ひとつひとつ確認をしていく。最後にボールペンで署名し、印鑑を押して、書類は完成。

 

「盗難事件は実際多いので、施錠はしっかりしてくださいね」と注意をうながしてくれた警察官に、再度謝罪と感謝を伝え、『自転車盗難事件』改め『おっちょこちょいここに極まれり事件』は幕を閉じたのであった。

 

 

自覚せねばなるまい――わたしはどこかしら抜けているし、自身の記憶を信じてはならない、と。

 

財布をなくさないように、絶対にポケットにしまうカードケースサイズのものに変更した。現金をおろし忘れて、駅の改札から出られなくなりそうになったことがきっかけで、キャッシュレス生活に切り替えもした。

 

そうやって対策をほどこし、『抜け』をカバーしたことによって、普通な人と同じにしゃんと生活を送れていると錯覚してしまったのだ。

 

おっちょこちょいもいくとこまでいくと、『おっちょこちょいであること』まで頭から抜けてしまうのだ。はははははは、は、は、はぁ……。

 

自転車を置き忘れないための対策として、ハンドルのところに鈴のキーホルダーを搭載しました。近所に出向いて、自転車を停めたあとは、必ずその鈴を手に持つようにする。

 

そうすれば、いくら抜けてるとはいえ、自転車を置いて帰ることはあるまい。最悪置いて帰っても、手の中に鈴があれば、自転車の置き忘れには気づく。

 

もうひとつ――これからは自分の記憶は疑ってかかることとする。絶対あてにしちゃあいかん。だめ、ぜったい。

 

ただでさえ物忘れがひどいというのに、認知症にでもなったら、いったいどんなことになるのだろうか。きてもない将来を心配しても仕方ないけれど。……とりあえずは色々対策をこうじて暮らしていこうと思います。

 

警察の方々、ご迷惑をおかけしてほんとすみませんでした。これからもちゃんと税金払おう。そう心に決めたへなちょこフリーターなのでした。